販売現場から生まれる「ブランド」らしくない服

「River」というブランドには、それを端的に表すキャプションがありません。神奈川県二宮でセレクトショップを営むご夫婦が手掛けるこの服づくりは、お店のブログを読み込んでも明確な言葉が見つかりません。そういった意味では、「ブランド」という言葉が最も似合わない存在かもしれません。

(写真:rasikuの佐々木夫妻(両隣)とトートーニーの神田さん。出典:rasiku blog)

洋服へのリスペクトと現場の知見

「River」の洋服はセレクトショップの現場で、販売の視点から生まれてきました。

しかし、これは単に「売れること」だけを追求したセレクトショップオリジナル(セレオリ)とは一線を画します。Riverの服は、国産ブランドへの深いリスペクトを根底に持ちながら、その上で「本質的に売れて、本当に着られる」服を追求しています。

これは、洋服の本質を見極める服好きとしての感覚と、販売現場の知見が融合した、他に類を見ない服づくりと言えるでしょう。

こんな偉そうなことを言うと、rasikuのお二人に怒られるかもしれませんが、私はそう感じています。

Riverと85-Storeのつながり

実は私は、rasikuがまだ盛岡にあった時、アルバイトをしていました。

震える手で履歴書を持って行ったのが昨日のように感じられます。

拙いながらもアパレルの扉を開いてくれたのがrasikuでの経験でした。

人は多くないお店でしたので、店主と『POPEYE』を読んだり、昔話を聞いたりといったことが思い出されます。

その後、様々な経験を経て一度アパレルの道を諦めますが、今の奥さんとの出会いをきっかけに再びアパレルに戻ってくることになりました。(その辺りの経緯は、くらし灯さんのポッドキャストで詳しくお話ししています。)

ドロップアウトからの再始動、そして決意

rasikuは洋服を追求し続け、「River」というブランドまで立ち上げていました。一方、エンジニアとしての道を歩み始めていた私も、Riverの服を時々買わせてもらったり、売りつけられたり(?)する関係が続いていました。

そして、いよいよ85-Storeを始めるにあたり、「どうしてもRiverをやりたい」という強い思いと、「一度ドロップアウトした僕がやってもいいのだろうか?」という後ろめたさが同居していました。

二宮への旅

85-Storeとしての仕入れ旅行として、私は神奈川県二宮に行くことを決めました。盛岡から二宮に移転して以来、「自分のお店を持ちます!」と誓った後ろめたさから、一度も訪れることができなかった場所です。

それでもRiverをやりたい。

震える手から履歴書を受け取って、私にアパレルを初めていいよと言ってくれた佐々木さんの服を扱いたい。

何より、彼らが作る服がカッコいいからです。

そう思って二宮を訪れ、色々な話をさせていただきました。そして、Riverの中でも佐々木さんが一番悩んで作ったであろう「Crew Neck Sweater」を、85-Storeとして一番最初に紹介したいと考えたのです。

ファッションはもっと自由であるべき

「Crew Neck Sweater」は、どちらかと言えばRiverの「作りたい服」から一番かけ離れた服のように感じています。ライムイエローやショッキングなピンク、児童のスモックのような薄いブルーといったカラーリング。そして大袈裟なほどのドルマンスリーブは、ファッション的にかなり振り切った方向性です。

「売れなければ意味がない。」「手に取ってもらえなければ意味がない。」これはブランドの現実です。ネイビーやグレーといった定番色を作れば、確かに売れるでしょう。しかし、このセーターのカラーセンスからは、ファッションはもっと自由であるべきという佐々木さんの強い意志を感じ取ることができます。

85-Storeの裏テーマとCrew Neck Sweater

85-Storeには「むすんで開く感性」という裏テーマがあります。

これは、「堅実な選択から外れ、開いていく感覚によって、次にまたむすんでいくときに、個人のファッションセンスに幅が出て、いずれ自由に生きる選択の幅が広がっていくように」という願いが込められています。

Crew Neck Sweaterは、まさにこの「開いていく感性」にぴったりなセーターです。

「何か新しいことを始めてみよう」「今まで着ていなかった服を着てみよう」「昔好きだった色を着てみよう」。

突拍子もないカラーかもしれませんが、これこそが85-Storeのオープンに最もふさわしいセーターだと思えてきました。

ゆいまるはそういった僕の悩みを飛び越えて、可愛いとだけ言っています。

可愛いと思ったら、着てみてね。

また週末にお会いしましょう!